エンジニアとしての生き方 -IT技術者たちよ、世界へ出よう!-

April 12, 2011 - 書籍

エンジニアとしてのキャリアを見つめ直すための本です。著者のブログや雑誌寄稿を再構成されたもの。私は著者ブログ購読していないので今回が初見なわけですが、内容については同意できることばかりでした。 ということで、ざーっと読んでみて感じたこととかをメモ的に残しておきます。

本の趣旨としては「海外へ出よう」というメッセージなのですが、日本を出ていってしまったら日本の企業は変わらないままなのでは。そうではなくて自分たちが内部から変えるべきなのでしょうか。それとも変わらない会社が淘汰されて日本全体が解体されていくのが望ましいのでしょうか。

企業のあり方については第三章の最後に触れられていて、P115に、米国のやり方が日本でも正しいとは言えないことについて述べられています。

自由競争による貧富の差を広げる。「格差を嫌い、「結果平等」を好む日本人がそんな状況に耐えられるのか疑問である。
と述べた上で、政府が土台を整備する必要があると下記の言葉で絞めていました。

P116:

結局は日本人の気質にあった「日本なりの資本主義のあり方」というのを見つけて、その枠組のなかで、アジアに進出しようとする日本企業を税制面などで優遇するなどして、日本企業の海外での競争力を高める方向でサポートするのがこれからの政府の役割なんだと思う。

第二章:日本のエンジニアは大丈夫か

P57:

そして最も許せないのが、そういった上流→下流とうい階層構造でプログラムを作る工程そのものだ。
「最初の設計はおおまかな仮設計であり、プロトタイプをつくりながら仕様を決定していく」ということについては、同意。これってドメイン駆動設計(DDD)にも通じるような。設計から実装まで幅広い範囲のイテレーションを回すアジャイル的スタイル。日本では明確な職業名を与えることで無意識に役割や分業を考えてしまいがちであるけれど、本当は職業名なんて些細なことなのでしょう。というか技術を知らない企画から目的が曖昧な企画出されても、ね…

それから、ものづくりの本質を捉えきれていない点についても触れていて、P81に以下の記述があります。

たぶん、最も強く意識すべきは「合議制」では良いものは作れない」という法則。デザインに関わる人が多ければ多いほど、いろいろな意見が寄せられてしまい、「せっかく有意義な意見を出してもらったのだから」と次々に意見を取り入れられているうちに、機能だけはあるけど魂がなくて妙に使いにくいものができてしまう。
これについては自分の意見に責任を持てないことの裏返しなのかも知れませんね。みんなで決めたことじゃないと強くプロジェクトを推し進めることができない、とか。 P81に「企画に関わる人を減らして、魂のあるものを作る」とあるが、まさにその通りで、上長の承認が得られないと企画として動き出すことができなかったり、大きな組織であるが故の責任委譲が機能しない傾向にあるのでしょう。

第四章:自分を変えて自由になろう

4-2 キャリアパスの考え方

「入社時にスキルを問わない会社」には就職してはいけない
自分の場合は大学は文系だったし知識もほぼない状態だったけど、スキルが問われなかったおかげで今の会社の就職し、そこから技術なりを身につけていくことができた。可能性が広がる点については評価すべきではないかと思います。とはいえ、たまに使ってしまう「文系なんで」という言葉。これってExcuseとして使っている訳で、反省しないと認識しています。スキルを問わない会社に希望する学生は、これからスキルを磨く強い意思のある人間か、専門的スキルを望まれない会社に就職したいだけの人間のどちらかでしょう。 ただ、このような採用方針は、専門スキルを伸ばせるだけの力が社内にある会社でのみ採用されるべきだと思います。外部研修とOJTによる放置プレイで成長できる人間は稀でしょう。「入社時にスキルを問わない会社」は技術職と採用担当の意思がズレている可能性があるので注意すべきだと思います。

P141: 自分の適性を見つめ直す

以上のようなことを考えた上で、自分がこの業界に対してどんな価値を提供できるのか、自分は何が得意で、理想的には何がしたいのかを問いただしてみる。
これは定期的に見返したいところ。今の会社がなくなったときに自分には何が残るのかを、常に意識しないといけないでしょうね。

第五章:エンジニアとして世界で成功する

P192:

学生諸君にお願いしたいのは、この手の課題にどんどん取り組んで「新しい技術をすばやく習得して応用する」テクニックを身につけることである。
金魚の群れのシミュレーションの例を取り上げてのこのことば。技術は習得してもそれを応用にもっていくことが重要なんだなと。情報そのものはネットにあるので、知識よりも「適応力」や「応用力」がずっと重要と言っている。引き出しとしての知識だけでなく、それがどう活用できるのか、まで考えを巡らせる癖をつける必要がありそうです。

P217:

私がMBAを取得することにした10の理由

5.メインジョブ・エンジニア、サポジョブ・MBAというのが最強だから
この真意が知りたい。

※2011/04/14追記※ 後日、Twitterにて著者の中島さんに質問したところ、回答ブログを頂きました。

P218: リーダーに必要とされる感情知性(Emotional Intelligence)

  • Emotional Intelligenceの5つのの要素
    • self-awareness
    • self-regulation
    • motivation
    • empathy
    • social skill

P244

5−8 技術書以外の本もよもう−世界を目指すエンジニアのための推薦図書−